TeamDreamChallenger



◆LEG 6 (Jan.9) GAO - MENAKA
SSスタート  当初の予定ではガオからタウアまでの736kmだったが、 翌日のビバーク地のアルリットとその背後のアイール山脈を通るルートの治安が良くないという事で急遽コースとスケジュールが変更になった。 主催者は「セキュリティの為」としか説明していないが、昨年の8月までアルリットやアガデスは内戦があったとの事。 しかも、11月にはアルリットにいた海外青年協力隊が危険であると判断して国外退去している。 内情に詳しい人は「死亡者が出ても進んでゆくTSOがスケジュールを変更するという事はよほど危険だと言うことだ。」と説明した。 ただでさえ苛酷なラリーに追い打ちをかけるような精神的不安が大きなプレッシャーとなる。
 プレスクルーはガオのスタートを撮影後、国道で迂回して明日のタウアを目指した。 しかし400kmがオフロード、その後舗装路が600kmとかなりヘビーだ。 コース変更がなければ1日で1000kmを走るところだった。それを考えればまだ楽な方である。

◆LEG 7 (Jan.10) MENAKA - TAHOUA
 新しく設定された第7レグのSSは、当初の第6レグのリエゾン区間だった396kmで争われた。 ラリー前、この区間は路面状況が非常に悪くSSには適さないという理由でリエゾンになったところだが、言われていた程ハードではなかったらしい。 長いステージが2分割されたことによって、さらにハイスピードでスプリント的な要素が加わってきた。
カミオン  プレスカーは首都のニアメイを朝の9時に出発し、400kmを6時間かけて走りビバーク地のタウアに到着した。 既にバイクの選手の多くはゴールしている。4輪のトップグループも着いていた。 今日のコースの後半はまばらな草木の間をぬって走るため、日のある明るいうちが走り易く追い越しも楽である。 逆に暗くなると木をよけるのに神経を使いなかなかペースが上がらない。 その上カミオンが通った後は路面が掘れていてさらに走りにくくなる。 速いワークスはより速く、遅いプライベーターにはさらに不利となる状況だ。
ドリームチャレンジャーの4台のうち3台は下位に位置していていつも路面状況は悪く夜間走行も多くなりがちで疲労の色が強いが順調に日々の難関をクリアしている。 #296の稲垣・永田組は#295を助けていたためにタイムオーバーのペナルティを受けていて順位こそ悪いが日々の区間タイムは悪くない。 チームトップの金森・進藤組は車の調子もよく、今後上位進出をねらえるポジションに位置している。 明日は前半戦の最後のステージとなり、砂丘越えがいくつかでてくる。 砂丘はドライバー金森さんが得意としており、タイムアップが望める。今後の順位が楽しみだ。

◆LEG 8 (Jan.11) TAHOUA - AGADEZ
 新しい第8レグはビバーク地となるはずだったアルリットを通過して舗装路のリエゾン240kmが追加された。 この日やっとロードブックにDUNE(砂漠)の文字が出てくる。 目印が何もない所のロードブックはただまっすぐの上矢印 "↑" とコメント欄のCAP(方位)だけだ。  プレスカーは前にも言っていたように、アルリット付近は特に危険らしく他のプレスカーも奥へは行かないということなので安全をとってスタート後に国道を通ってアガデスへ直行することにした。 距離も400kmと短く昼過ぎにはアガデスへ到着した。日中は日差しが非常に暑い。 今までまっ昼間に車からはなれてぶらぶら歩いたことがないので余計にそう感じるのかもしれない。
金森・進藤組  そうしているとバイクのトップ、ペテランセルが帰ってきた。脅威的な速さである。 舗装路でショートカットしてきた私達とさほど変わらない。このぶんだと4輪もかなり早そうだ。  3時過頃、太い排気音とともに篠塚選手が帰ってきた。その後も三菱勢がぞくぞくと帰ってきた。 そして、まだ日があるうちに#292の金森・進藤組が戻ってきた。 この日は調子が良かったらしく、区間タイムは総合で36位、T3ディーゼルクラスではトップタイムだった。 過去2回のパリダカで追越せたことがないカミオンの菅原さんを追越したとドライバーの金森さんは喜んでいた。 このままクラス優勝と上位入賞を目指してほしい。  他の車も夜7時頃には戻ってきた。が、#293の岡田・土方組がまだ戻ってこない。 夜の9時頃にSSはゴールしたらしいとの情報が入り少し安心する。11時頃だったか、やっと帰ってきた。 遅かった理由はスタックした他車を何度も助けていたのだそうだ。これまでもレスキューしているようで、パリダカのJAFと呼ばれてしまう。 これで前半戦を5台中4台も生き残れたことになる。この調子でダカールまで行けることを願う。

◆休息日 (Jan.12) AGADEZ
休息日  今日はラリー中唯一の休日である。しかし、それは車にとってであって、私達は車の整備をしなければならない。 朝の6時に起きて整備を開始。朝食を簡単にとって12時頃まで作業をする。さすがに昼の暑い時間帯は避けてまた3時頃から暗くなるまで作業をする。 車によってダメージの程度が異なるが、オイルの交換やショックの交換は全車実施した。金森車は念のためミッションのオーバーホールを行った。 三菱は毎日やってるがプライベーターはレース中1回出来れば良いほうだ。
休息日の夜 ドリームチャレンジャーのメカニックは3人。西野直樹くんはマツダのディーラーでも一目おかれ、バリバリ整備をやってる頼もしい人だ。 もう1人は高木勉さん。愛車のポルシェを売ってまでして参加してくれた。 最後は吉岡修一さん。スノーボードのインストラクターをやっているのだが、手先が器用でメカニックも出来てしまうへんな人。 もちろんドライバーとナビ自らも整備して車はだいぶ元気になった。

 ところで、同じ日本人の根本選手は今日の昼に戻ってきた。 なんでもミスコースして国境近くまで行ってしまったとのこと。 たまたま国境を警備している兵隊がいてそこの場所がわかり、昨日の夜は安全のため以前お世話になった(?!)村の村長さんのところで一泊、 日が昇ってからアガデス目指して帰ってきた。冷静を通り越した神経に驚きを覚えた。

◆LEG 9 (Jan.13) AGADEZ - OCLAN
 休息日をはさんでいよいよ後半戦がスタート。砂漠地帯に入り見通しが良く砂地でハイスピードなコースが多くなる。 今日のステージもCP1までのルートが変更になり、山岳地帯を通らずに西側の平地を通るコースが設定された。  4輪の36番手スタートの#292、金森・進藤組は木の切り株をヒットしてしまいパンク、タイヤ交換を強いられていた。 せっかくのスタート順位がタイヤ交換の間に次々と後続車に追い越されて次第に焦ってくる。 どんなトップドライバーもパンクはするのだが、スタート地点からほどない場所の為、次々と横を通られると気にするなという方が難しい。
蜃気楼  プレス2号車の私達は見通しのよい絶好の撮影ポイントでチームのみんなを待っていた。 360度、見渡す全部が蜃気楼になっていて陽炎越しに競技車が砂煙を上げながら走ってくる。とてもかっこいい。
一時間ちょっとするとドリームチャレンジャーの1台目が見えてきた。 しかし、どうやら#292の金森さんではなく#293の今井・那須車だった。 私達の横にくると彼らは車を止めた。ドライバーの今井くんが言うには、#292はトラブルで止まっていて何か手伝おうと声をかけたら先に行くように指示されたらしい。 数分後に後続の稲垣・永田組、岡田・土方組も同じ内容のことを私達に告げた。この状況から判断するとかなり重症なトラブルのようだ。
 この日#292がビバーク地のオクランに戻ってきたのは午前2時。 この日のトラブルの様子をナビの進藤さんが語ってくれた。

「パンクしたから、その遅れを(金森)タツが取り戻そうとしはじめたのね。 あせってなかったと言ったら正直なところウソになるだろうけど、コースのショートカットをしはじめたわけ。 わだちが大きくカーブしている所を直線的に走っちゃう。 でもね、俺としては今回完走できればいいのね。だけど、タツはもう2回完走してるからそれじゃ満足できないんだよね。 それでショートカットをはじめだしてから頭の中で声がしてた 〜『ショートカットには罠がある』〜 ということをハッキリと言えなかったんだよねぇ。
で、独り言のように『ショートカットには罠があるよねぇ・・・』と言った丁度1分後、タツが『しまったぁ!!!』って叫んだわけ。 その瞬間ものすごい衝撃があったかと思うと外の景色が全部空、真っ青になった。結構滞空時間は長かったよ。鳥になった気分だね。(笑) そして2回目の衝撃、これは1回目の10倍すごかった。2人とも『う〜』としか言えない。しばらくしてお互い『大丈夫かぁ?』って。 深い穴が起伏の後にあったからさ、見えなくてそのまま時速100kmで突っ込んじゃった。 20m飛んでたよ、ほんと。ちゃんと歩いて計ったからね(笑)。
車をみると右前輪が無い。どこにいったかというと運転席側にめり込んでた。 リーフスプリングはぐにゃぐにゃに曲がってるしショックは2本破裂してオイルが飛び散ってた。すごかったよ。
 運良くトヨタチャレンジクラブのカミオンが通りかかってね、助けを求めたんだけど『こりゃだめだよ』ってゼスチャーをされた。 でもまだチャンスはあるぜって感じでリーフをぽ〜んと投げてくれた。 それから2人で8時間かけて修理してさ、とりあえず動くようになったんだ。 でも4駆にはならないからずっと2駆で走ってきたよ。 これからもずっと2駆で走らなきゃいけないと思うと気が重いなぁ・・・。」

292号車 修復作業
これで順位は一気に95位に転落。クラス優勝はおろか完走、いや次のステージを走りきることさえ困難になってきた。

◆LEG 10 (Jan.14) OCLAN - KIDAL
オクラン  オクランは砂漠の真ん中の何もないところ。ここでのスタートは以前テネレ砂漠で行われていた一斉スタート。 バイクは全車同時スタートで、4輪も10台づつが同時にスタートを切る。 その壮観なスタートを見てみたいが、それをするとプレスカーは今日中に537km先のゴールに着かないので映像は主催者に任せて朝の4時に出発した。 まだ夜が明けていない真っ暗な砂漠を走って行く。辺りの景色は全く見えない。 ヘッドライトで照らされている前方も同じような路面がずっと続くのでスピード感がまるでない。 時々砂丘の山が前方に現れるので越えやすいルートを選んで登る。砂丘の頂上が比較的ゆるやかな場合は直進のまま侵入してスピードに注意する。 ショックを最小限にしながら頂上でスタックしないようにうまくコントロールしなければならない。 砂丘の頂上が鋭角な場合は斜めに侵入して、ちょうどスノーボードのエッジの切り替えのように頂上で左右輪の荷重を入れ替える。 下りは落ちてゆく方向にハンドルを切る。この繰り返しで砂丘を越えていく。
 ここ数日のコース変更で比較的楽なコース設定だった前日までに比べて本来の予定通のコースとなった今日は多くの車にトラブルが出たようだ。 トヨタチームアラコのサラザン選手のランクルが炎上している。ドライバー達は無事のようだが、車の方はフレームしか残っていない。もちろんリタイアである。 そして、いすゞの新井選手はミッションのトラブルでギアが入らず、残りの200km以上をチームメートの車に牽引されながらの走行となった。
 この日のビバーク地もメカニックなし。大きなトラブルを抱える車にとってはあともう1日もたせなければならない。 当チームの4台も無事戻ってはきたが、金森・進藤組のトラブルは深刻で4駆にならないのはもちろんフロントの足回りもガタガタでいつ壊れてもおかしくない状態である。

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