◆LEG 11 (Jan.15) KIDAL - TOMBOUCTOU
今日もSSは568kmと長い。おかげでプレスカーも昨日に続いて朝の4時出発。
途中は非常にフラットな砂漠の高速コース。50kmほどずっとトップスピードをキープ。
その後徐々に木が多くなり、草原のピストを通るようになる。ピスト上は深い砂地になっている。
私達のプレスカーはそこでは3速に入れると失速してしまう。そのあたりで水温計が上がり始める。
2速でスピードは出ていないが、ほとんどエンジン全開状態が続くのでとうとうオーバーヒート。脇にとめてしばし休憩。
それからは気長にややゆっくり走ることにする。
しかし多くのラリーカーが通った後は砂地がふかふかになっていて余計に走りにくく、タイヤが埋まってスピードが出ない。
あまりゆっくりしているとT5クラスのサポートカミオンに追い越されてその路面状況に拍車がかかる。
T4クラスのレーシングカミオンにくらべて重いので路面がかなり掘れてしまうのだ。
ビバーク地のトンブクトゥに着いたのは夜の8時過ぎ。
今日のステージはけっこうきつかったがマシンはようやくメカニックのサポートを受けることが出来た。
#292の金森・進藤組はメカニックに見てもらったが、走るようにすることは出来ても本来の形に戻すのは既に不可能だった。
◆LEG 12 (Jan.16) TOMBOUCTOU - NEMA
トンブクトゥでは久し振りにメカニックのサポートが受けられた。
しかし、どの車もトラブルをかかえたまま走り続けている。
#292の金森・進藤組は後半戦スタート直後の大ジャンプで足回りを大きく痛めて2輪駆動のままの走行。
#293の岡田・土方組はいまだにGPSが不調でナビゲーションにプレッシャーがかかる。
#294の今井・那須車はボディーに多少の凹凸はあるもののマシン的には大きな問題はない。
#296の稲垣・永田組は昨日の転倒でフロントガラスが破損、ビニールシートを貼ってのスタートだ。
しばらく行くと非常に粒子が細かい砂地に入る。車が通るとチョークの粉よりも細かい白砂がもうもうと立ち込める。
全く前が見えず視界ゼロになる。
さらにカミオンが通った後はタイヤの跡がとんでもない深さになっていてそこにはまると私達のランクルはボディの底が着いてしまう。
こうなっては自力脱出は不可能になるので轍を避けるようにクネクネ走る。
コース中盤からは路面はそれほど良くなく、ところどころに穴があるのでスピードに乗らない。
気分的にもフラストレーションがたまる気がする。
そうしているうちに、ゴールまであと200kmも先というところで日が暮れ始めてしまった。
けっこう人間も疲れてきてるのでゆっくりペースでプレス2台つるんで行くことにする。
固い路面のところどころに大きい穴がある。フォグランプで浮かび上がるその黒い影に注意しながら走行する単調なドライビングが5時間ほど続く。
この日のビバーク地のネマに着いたのは午後11時。もうヘトヘトだ。
でも車はメカニックにまた見てもらえるので安心・・・と思っていたのだが、どうやら様子がちょっと変だ。
今日はエアメカ有りの日なのにメカニックが着いていない。他のいくつかのチームのメカもいない。
なんでも飛行機が離陸時にスタック(!)して飛ばなかったらしい。
エアメカのサポートを受けれたチームとそうでないチームが出てしまっているが、この不公平はどういう形で吸収されるのであろうか?
しかし、当チームのメカニックとヘルパーの人はこれでモーリタニア共和国へは1歩も足を踏み入れずに次のサンルイへと移動して行った。
(せっかくビザ取ったのにね。)
次の日の朝も早い。食事を取ったらもう12時過ぎ。少し仮眠をしたら午前3時にはまた出発しなければならない。
体は慣れてきていて問題ないがやはり疲労はピークに達している。
でも、実質はあと2日ということで自分に鞭を入れて進んで行く。ここまで来るとそれを楽しんでしまっている。
◆LEG 13 (Jan.17) NEMA - KIFFA
第13レグはリエゾンとSSがちょうど半分の300kmづつのコースだがSSは砂漠を通過する設定になっている。
なるべく夜のSS競技を避けるため、長いリエゾンがある今日のような日はスタートが朝の4:00と早い。
まだ暗い中をSSのスタートへ向けて走っていく。内陸部に比べてそれほどではないが、やはり朝は寒い。
14日目ともなればどの車もそれほど飛ばしてはいない。順位も大きく変動しないので現状ペースを維持するといった感じだ。
しかし、それでもトップグループのスピードは他車と比べると格段に早い。
逆に完走ペースの車はプレスを見つけると手を振って挨拶をしてくる。
もう2週間近く行動を共にしているのでみんな友達のような感じがする。
こちらからも大きく手を振って挨拶をする。気持ちがいい。
砂漠のステージで心配なのが2駆で走り続ける#292の金森・進藤組だが大きい砂丘は細かく迂回しながら進んでいる。なんとか頑張って欲しい。
私達の場所を大きく遅れて通過したのが稲垣・永田組。スタートから約20kmのところの岩場でパンクをしてしまったらしい。
フロントガラスの代わりに貼ってあるビニールが痛々しいがこのまま行けそうだ。
プレスカーは競技車が通過した後、コースをスタート地点まで逆走し、国道へ戻ってビバーク地のキッファをめざす。舗装のきれいな道で走りやすい。
途中、休憩して昼食(といっても配られる缶詰とお菓子みたいなもの)をとる。
その横をTSOの車が数台通っていった。「やぁ、昼飯かい?」といった感じでみんなクラクションを鳴らして手を振っていく。
ビバーク地へ着いたのは午後4時頃。もう半分ほどの車がゴールしていた。
ドリームチャレンジャーの4台はまだ着いていなかったが、日没頃までには全車戻ってきた。
◆LEG 14 (Jan.18) KIFFA - SAINT LOUIS
第14レグは751kmあるが、SSは166kmしかない。
しかも、明日のラックローズのSSは18kmしかないので今日のステージが実質最後になる。
ビバーク地のキッファからは455kmの長いリエゾンだ。しかし、途中までの300kmは穴だらけ荒れた路面。
気をつけないとリエゾンで車を壊しかねない。私達の車も大きなショックを受けるたびに揺れる安全タンクを気遣いながらの走行だ。
今日のコースは砂地だが、見通しがよくゆるやかなカーブなので走っていて気持ちがいい。
チームの4台もみんな調子よく、楽しみながら走っているようだった。
ところが、最後の最後でとんでもない事態が起こっていた。
SSのゴールに着いてみると#293の岡田・土方組と#296の稲垣・永田組が止まっている。
近付くと、#296は車体がグシャグシャになっている。
ボンネットはスポーツカーのように鋭角になり、後ろの窓部に入れてあるアルミの板が無い。
もちろんドアは開かず、窓から出てくる。
100km/hで3〜4回転したらしい。幸い足回りは大丈夫のようだ。
ここからビバーク地までの100kmを#293が#296を牽引していくことにした。
ただし、牽引したままゴールは出来ないので最後は手で押してゴールする。
メカニックは最終サービスが大仕事となった。まず、ハンマーでボンネットをこじ開ける。
ラジエターが壊れているがエンジンは押されていない。なんとかなりそうだ。
他の車でボディーを引っ張ってなんとかラジエターを取り外す。
ほかのチームはたいした作業もなく、あとは車を綺麗に掃除する程度で慌ただしくしているのはうちのチームだけである。
ギャラリーも多い。トヨタ・フランスのメカニックのパトリックも手伝いにきてくれた。
残念なことに、トヨタ・フランスは全車リタイヤしてしまったのだが、それにもかかわらずプライベートの私達をサポートしてくれた。
彼に走行出来る条件を尋ねると、「ミラー2個とライトが2個点灯すればいい」とのこと。
なんとかエンジンまわりを修理して、スペアのフォグランプ1個と割れていないノーマルランプ1個をつける。
期待をこめてイグニッションを回す。車体が小さく揺れた後、太い排気音と多くの拍手と歓声が#296の周りをうめ尽くした。
いよいよ明日はゴールのダカール、海岸でのビクトリーランが待っている。
◆LEG 15 (Jan.19) SAINT LOUIS - DAKAR
1月19日、いよいよ今日がラリー最後の第15レグである。
寝袋を丸めてテントをたたむのも最後だし、紙袋に入った昼食や水のボトルをもらうのも今日が最後になる。
1月4日の初日をゴールしたとき、全員が「これがあと14日間も続くのか・・・。」とため息をもらしていたが、
この日になると「もう4〜5日くらい走ってもいいよなぁ」と言えるくらいになっていた。
サンルイを出発して最後のSSとなるダカールの海岸を目指す。
途中の街や村では8000kmを走り切ったバイクやラリーカーに対して多くの人々が手を振って祝福をしてくれる。
230kmのリエゾンはあっという間だった。幹線道路を右に曲がり、細い道を進んでいくと潮の香がたちこめた。
道の突き当たりにはダカールの海、大西洋が広がっていた。14日振りに見る青い海はとても新鮮で、それと同時になんとも言えない嬉しさがこみあげてきた。
選手の全員がダカールの青い海をバックに記念撮影をしていた。自分の愛車ももちろん同様である。
みんな最高にいい顔をしている。どんな俳優でもこの笑顔には勝てないだろう。
我々ドリームチャレンジャーもみんな全身でここまで到達できたことの喜びをあらわしていた。
顔、髪、服は砂と汗でひどく汚れているが不思議と爽やかな感じがした。こんな爽快感はいままで味わったことがあっただろうか?
いよいよ最後のSS、ビクトリーランである。距離は18km。第15SSのロードブックにコマ図はない。
「THE LAKE ROSE SELECTIVE SECTION PROGRESS WITHOUT ROAD-BOOK.
WELL DONE, BRAVO, TO BE HERE TODAY ! 」
なんともかっこいいセリフである。こんな些細なことでも感動してしまう。
今井・那須車はT2ディーゼルクラス3位に入賞すべく先行してゴールへ。
残りの3台、#292の金森・進藤,#293の岡田・土方,#296の稲垣・永田はコンボイを組んで海岸を走行。最高にカッコイイ!!
ダカールの海を背にして走る3台の車に順位なんかは関係なかった。
最後まで走り抜いた自分達のためのビクトリーランである。
海岸を後にして木々の間を抜けると真っ赤な色をしたラックローズが現れる。
バラ色の湖を半周した後にゴールのポディウムがある。1段高くなったステージに1台づつのぼる。
マイクでゼッケンNoと名前がアナウンスされ、車のルーフに上ってシャンパンを開ける。
TVではよく見る光景だが、目の前で行われているのはそれとは全く違うものに感じられた。
この喜びに追い打ちをかけるかのように、そこにはリタイアした寺田君と和田君の元気な姿があった!!!
彼等とは実に11日振りの再会である。言葉を交わすよりも互いに抱きあって歓喜の声を出す方が十分に気持ちが通じあえた。
ラックローズをバックに最後まで耐えた4台の車と共に記念撮影をする。
初心者だらけのチームでありながら日本人プライベートチームで完走率80%は最高である。
しかも、そのうち1台はT2ディーゼルクラス3位入賞という成績も残せた。
主催者からはチームドリームチャレンジャーに対して特別にチームスピリット賞というのが与えられた。
これは平均年齢28才という若いビギナーチームの参戦はフランスの人々から最大の歓迎を受けていたことの証である。
そして4台もの完走車を出せたことはドライバーとナビ、メカニックとヘルパーの全員が自分の持てる力を最大限に発揮して最高の形で結晶したからであろう。
そしてこのチームのパワーの源には各車のリアに貼ってあるたくさんの個人スポンサーからのエネルギーがあったからである。
ひとつひとつは小さいが、それぞれにスポンサードしてくれた人の心がこもっている。
このステッカーを見る度にみんな幾度となく勇気付けられてきた。
私達の車には他の車にはない3人目のクルーがいたことを24人は知っている。
ほんとうに日本からのあたたかいご声援をありがとうございました。
チーム ドリーム チャレンジャー 一同
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